CAEによる設計の改革術

  • CAEによる設計の改革術
  • 有泉徹
  • 日刊工業新聞社

技術コンサルタントによるCAE利用のススメです。 どうすればCAEを有効に使えるか、事例を用いて説明しています。 CAEツールそのものの利用方法ではなくて、CAEツールをどう仕事に組み込むかという内容です。

設計や解析の担当者向けというよりは、マネジャーとか設計品質の向上を進めている人向けという感じです。 設計する立場のものからすれば「そうだよね」という思いがします。

一昔前は、少ないPCリソースで順番待ちしながら解析していましたので、解析順の調整をしたり、面倒な依頼書を書いたりと、はっきり言って手続きが面倒で遠ざかっていました。それが最近は、小さい部分の解析なら1時間とかからずに結果が出ます。すごく便利になりました。 解析のレスポンスが早くなったことで、モデルを作りながらトライアンドエラーで検討できるようになりました。 ということで、どちらかというと私はCAEツールを使っている方だと思います。どこが弱いか分かり易いし、人に説明するときにビジュアルだと分かり易いですから。

著者は、設計者がCAEを使い易い環境の整備を訴えていますが、それだけでは設計者が自発的にCAEツールを使うようにはならないでしょう。

同じ計算をするにも、鉛筆を使う人もいれば電卓を使う人もいて、Excelを使う人もいます。自分にとってどのツールが一番便利かということで選択されるでしょう。CAEツールの利用は、利用する瞬間は設計者にとって工数が増えるのです。使わなくても、後で問題が起きないかもしれないのです。それでなくても残業してて、上司からは効率アップを求められるのです。レビューまで課題が山積みだし、スケジュールは待ってくれないし、余計な手間はかけられないとなるのではないでしょうか。

しかも、手戻りが無いように設計したって、たいていそれ自体は評価されないのですよ。

こういうことを防ぐには、まず上司がCAEのメリットとデメリットをよく理解すること。上司が設計担当者の設計をよくレビューすることが大切だと思います。

この本に書かれていることは真っ当だと思うのですが、短絡的に「構想段階のレビューからCAEを必須にする」とか言い出す偉い人が出てきそうで恐いです。

まあ、でもそれでCAEツールに予算と工数を出してくれるなら良いか。